自然派素材の建材 高級注文住宅向け解説

自然志向の素材を使った床材や壁材は、見た目の美しさのみならず、住う人の健康面にも優れた作用をもたらします。

人工素材にはなく、自然由来だからこそ得られる、機能性や耐久性に着目して、自然派素材を取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事では、自然由来の建材にどのようなものがあるか、また、それぞれの特性はどのようなものかを解説し、高級注文住宅での素材選びに役立つ情報となっております。

内壁材

住宅で使われる壁材にはクロスや塗壁、木材、タイルなどがあります。
一般的な住居ではビニールクロスなど、比較的安価に使用できる素材が用いられていることが多いですが、高級注文住宅は住う人の生活スタイルやセンスに合わせて幅広い選択肢があります。
今回は、内壁材の中でも、自然派素材を使ったものをご紹介してまいります。

漆喰

貝殻や珊瑚が長い年月をかけて堆積し、石灰岩となったものから、それを切り出して「消石灰」を生成し、さらに「つなぎ」と呼ばれる繊維を混ぜて作ったもの。

古代より壁材に使われてきましたが、今でもシックなデザインの住居にはよくあいますし、高級注文住宅には数多く取り入れられています。
漆喰の主成分である石灰岩は、二酸化炭素を吸収することで徐々に消石灰へと変化していく性質があるため、漆喰の壁は「呼吸する壁」と言われているように、空気中の二酸化炭素を徐々に吸収します。漆喰が落ち着いた空間にしてくれるのは、見た目のデザインだけではなく、こうした化学的な根拠もあるのです。

漆喰の壁には細かな穴がたくさん開いてあり、そこから空気中の水分を吸収して、湿度を抑える働きがあります。また、耐火性にも優れており、火災が発生しても燃え広がりにくいのです。

漆喰のデメリットとしてはコストが高いことがあげられます。長期的なランニングコストは、高級注文住宅のオーナーであればあまり問題にはなりませんが、塗り直しの必要があるなど、少し手間がかかるのは覚えておきたいところです。

珪藻土

珪藻土(けいそうど)も自然由来の素材ですが、漆喰が岩石を砕いたものが原料なのに対し、珪藻土は「珪藻」と呼ばれる藻の一種を粉末状に砕いたものを特殊な材料で壁材にしたものです。

珪藻土自体は、壁材以外にも、お風呂マットやキッチン用品、コースター等に幅広く使われていることからもわかるように、極めて優秀な吸湿・吸水性能を持っています。吸湿性能は漆喰の120%とも言われています。
また、漆喰と同様に耐火性に優れているため、コンロ周りの壁材や耐火煉瓦などにも使われています。

一方、珪藻土の弱みは、カビが発生する可能性があること。住宅設備などでうまくお部屋の調湿ができていれば、そもそもカビは発生しませんが、漆喰などに比べてカビができやすいことに注意を要します。

床材

人の目線は下に向かいやすい性質がある以上、床の素材は人々の注目を浴びやすいものです。インテリアと同様、部屋の印象をガラッと変える力を秘めています。
床材は生活のスタイルに強い影響を与えます。素材によっては、硬さや断熱性能、防音効果など、様々な特徴を持っています。お子さんやペットなどの家族構成によっても、選びたい素材が変わってきます。

無垢材

一般的な住宅に多く使われているフローリングが集成材と呼ばれるもので、薄い木の板を接着剤で繋ぎ合わせた人工の木材です。それに対して無垢材は、その名の通り、天然の状態のままの木材であり、森で木を切り倒してそのまま持ってきたかのような印象を与えます。

無垢材は天然の木を切り出したままの状態ですから、当然、品質にはばらつきがあります。そうした一つ一つの個性を楽しめるのも無垢材の魅力でしょう。

また、優れた吸湿作用や断熱性の高さも魅力の一つでしょう。

そんな無垢材にもデメリットはもちろんあります。
強化された人工のフローリングに比べて、天然の無垢材は傷がつきやすく、痛みがすぐに目立ってしまうことが挙げられます。また、高い吸湿性能ゆえに、膨張と収縮を繰り返すことから、フローリングに隙間や反りを生み出してしまったり、他の建材に悪影響を与えてしまう恐れもあります。
そうした問題は、施工前に十分に検討しておく必要があります。信頼できる設計者・施工業者と相談して対処していきたいところ。

テラコッタ

テラコッタは素焼きの焼き物のことで、土を成形して焼いて固めたもの。海外の床材では割とポピュラーな存在です。数百年前のヨーロッパのお城にも盛んに使われていました。

焼く時の温度や、室内の温度で風合いが全く異なってくるのが、テラコッタの魅力。艶がなく、マット感のある素材なのに、茶色がかったオレンジやベージュなど暖かみのある色合いを出せるのが特徴的です。また、優しい肌触りなので、裸足でも気持ちよく過ごせます。

テラコッタは見た目の通り、汚れにはあまり強くありません。汚れたらすぐに掃除するなどを徹底すれば快適に過ごせることは変わりありません。

コルク

コルク材は樫の木の皮を細かく裁断し、加工したもので、弾力性が特徴の素材。コルク自体はワインの栓として使われているのが有名ですが、コルクボードやコースターなど、インテリアや雑貨としても広く用いられています。

コルクの内部には数万単位の気泡が含まれており、これが強い弾力性をもたらしています。ものを落とした時や、人が転倒した際に、音や衝撃を吸収してくれる能力は他の素材を凌牙します。この弾力は、同時に、床の滑りにくさも実現してくれているので、お子さんやペットがいらっしゃる家庭にはぴったりでしょう。また、気泡の中には窒素が充満していることもあり、高い耐火性能も持っています。

コルク素材を床材とするのにも欠点はあります。
まず、素材そのものが経年劣化しやすいというもの。紫外線の影響を強く受けるコルク材は、変色が生じやすいのです。また、柔らかな素材である以上、破損が生じやすく、取り替え工事などの頻度は他の素材よりも多くなります。
また、コルク素材を適切に扱える業者は少数派であり、信頼できるパートナー選びも重要になるでしょう。

石材

高級なインテリア・デザインなら、外せないのは石材です。
重厚感ある天然石でできた床は、見る人全てに高級感を感じさせます。さらに、石材はナチュラルな雰囲気を残しており、どのようなデザインにも合わせやすいという特徴もあります。

石材は、他の素材よりもはるかに強度が高いのが魅力の一つ。多少のひっかきや、軽いものを落とした程度では傷一つつかない素材も多くあります。
一方、硬めの金属などを落とすと割れてしまったり、欠けてしまったりするのが石のデメリットです。一部が壊れただけでも、修理に高額のコストが発生するのも欠点として覚えておきたいですね。

天然物の石は様々な種類があり、見た目も性質も全く異なります。ご自身の理想とするお部屋のデザインに合わせて自由に選択できる一方、幅広い知識が必要となるため、専門的なノウハウを有する建築家等に相談したいところ。

天井材

天井の素材は、床や壁と比べると軽視しがち。しかし、天井に用いる素材によっては、部屋全体の印象がガラリと変わるものです。普通の白系統のクロスと木材を用いた天井では、明るさや高級感が全く違ってきます。

無垢材

床だけでなく、天井に無垢材を使うと、部屋全体の木質感がたかまり、よりナチュラルな印象を与えます。お部屋の空間を上質な雰囲気で満たしたいという方に、おすすめです。

床も天井も、天然木の素材を使う場合には、それぞれ異なる素材を選ぶと良いでしょう。お互いの素材がアクセントになり、コントラストが生まれるため、空間にいる人が天井の木材にも目を止まるようになります。

天井に無垢材を使う際に少し注意したいのが、やはり無垢材が天然素材だからゆえのポイント。割れや褪色など、自然に進行する経年劣化にも気を配る必要が出てきます。

和紙

壁のクロスとしてはもちろん、天井のデザインにも和紙を取り入れる方は多いです。和紙の独特の風合いが身直に感じられます。

また、和紙は通気性や調湿性に非常に優れた素材であり、見た目の暖かさのみならず、年中を通して快適に過ごすことができます。一般的なクロスと違い、厚みがあるため、破けるなどの心配も少ないのが特徴的です。

かかるコストとしては、普段のお手入れの手間。和紙の風合いが損なわれる可能性が高いため、水拭きや薬品による掃除には、細心の注意が必要です。

住み方にあった素材選びを

壁材、床材、天井材の素材は、デザイン性はもちろん、お部屋の使い方やご家族の生活スタイルにあったものを選びたいところ。普段の生活には暖かみのある優しい雰囲気の素材を、お子様やペットのいるお部屋には汚れにくい素材を、そして玄関や来客スペースには高級感ある素材を選ぶなど、工夫できるところがたくさんあります。考えている空間に一番あう素材をご自身で選べるよう、カタログなどをみながら、建築家などのプロフェッショナルに相談してみてはいかがでしょうか。